● 女児を盗撮、下半身を露出、給食に体液… 児童を狙う「変態教師」が増えたワケ 「そういえば、うちの娘の担任もやたら子どもたちにボディタッチしていたような……」 日本中の保護者をそんな疑心暗鬼に追いやるようなショッキングな事件が起きた。 名古屋市の小学生・中学生の教員ら10人ほどがSNSグループチャットをつくって、女子児童の下着などを盗撮した画像を交換していたのだ。 チャットを開設して管理していた小学校教諭(42)は、勤務先の学校で保護者に学校生活の様子を伝える「学校だより」の担当者で校外学習などの撮影もしていた。そのような立場を利用して、下着などの盗撮をしていた可能性もあるという。 また、メンバーの中には盗撮だけで満足できなかった者もいる。34歳の小学校教諭は、自身の体液を女子児童の楽器に付着させたり、給食に混入させたりしていた。 ただ、この事件は氷山の一角に過ぎない。こうしている今も「優しい先生」という仮面をつけ、周囲の大人たちを信用させながら、児童を毒牙にかける「変態教師」が後を絶たないのだ。 6月27日には、広島市内の小学校に勤務する38歳の教諭が10歳未満の女子児童を無人の教室に誘い込んで、自身の下半身を露出して、わいせつな行為をしようとしたとして逮捕された。他にも盗撮や未成年者にみだらな行為をするなどの不祥事が続発している。 「なぜこんな変態教師ばかり増えているのだ」と恐怖に感じる人も多いだろうが、小児性愛者の事件を取材してきた経験から言わせていただくと、このような問題が起きることはわかりきっていた。 今の日本社会で小児性愛者が逮捕されず、周囲から白い目で見られず、欲望を満たしながら生きるには、教員や塾講師になるというのが「最も合理的な選択」だからだ。
昔、小児性愛者の教師にインタビューをしたことがある。彼は小さな女の子を間近に見ることができて、時にじゃれ合ったりできるという理由で教員になった。「毎日が天国」「今日の××ちゃんは天使」などとはしゃいでいてドン引きしたものだ。 しかし、周囲は彼のドス黒い欲望にまったく気づくことはなかった。同僚や保護者からは「優しくていい先生」と思われていたので、わいせつなことをしたと疑いをかけられたときも「指導に熱が入りすぎた」という言い訳で切り抜けることができたと自慢していた。 要するに、教育現場というのは「小児性愛者が性的嗜好を隠しながら欲望を満たすことができる理想の職場」になっている現実があるのだ。今回たまたまメンバーの1人がわいせつ事件で逮捕され、彼のスマホから芋づる式に捕まっているが、このような「変態教師グループ」はまだ他にたくさんあっても不思議ではない。 「教師に対する差別と偏見だ!」と不愉快になる方も多いだろうが、実際に小児性愛者たちの行動を知っている人ほどこういう結論になる。性犯罪・性依存治療を専門とする「性障害専門医療センター(SOMEC)」代表の福井裕輝さんもこう仰っている。 「人口の約5%は小児性愛だと言われています。その上で、小児性愛者が子どもと触れ合う職業を自ら選択するため、率が上がる。先生が10人いれば1人は小児性愛者の可能性があります」(AERA 23年9月10日) 全く同感だが、個人的にはもっと高い割合でこの世界に入ってきているのではないかと思っている。子どもの性被害の「認知件数」が減ってきているからだ。 警察庁生活安全局人身安全・少年課の「子供の性被害の現状と取組について」によれば、20歳未満の「少年」が被害者となる「強制わいせつ」の被害の認知件数は平成25年に3950件だった。しかし、そこから年々減少をして7年後の令和2年になると1859件と半分以下まで激減。そこから増加に転じたものの令和4年でも2087件である。
ちなみに、2021年の厚生労働省の調査によると、日本では年間約39万人、つまり1日あたり1000人以上の子どもが性被害に遭っていると推定されている。 なぜ39万人も性被害者がいると見られているのに、被害の認知件数は減少してわずか2000件程度なのかというと、大多数が被害の声を上げないからだ。 では、なぜ泣き寝入りをするのか。幼すぎて被害を受けたこともよくわからない、恐怖で記憶を自ら封印しているなどのケースもあるが、「身近な大人から被害を受けているので黙らざるをえない」というケースも少なくない。子どもにとっての「身近な大人」とは実父や義父、親戚や近所の人だが、忘れていけないのが、教員・塾講師である。 ここまで言えば筆者がなにを言わんとしているのかおわかりだろう。日本の子どもの性被害の認知件数が減って被害の実態が分かりにくくなっているのは、小児性愛者が教員・塾講師という「悪事がバレにくい職業」にどんどん流入している恐れがあるのだ。 それが窺えるのが、児童や生徒などへの性犯罪や性暴力で懲戒処分などを受けた公立学校の教員の数だ。文科省によれば2023年度は320人で過去最多となっている(NHK 2024年12月20日)。「教員の数が減っている」「教師のなり手が少ない」と言われているのに、「変態教師」だけは着々と増え続けている。子どもを性的な目で見ている小児性愛者が多く、教育現場に流入していると考えればつじつまは合う。 昔の小児性愛者というのは、小さな女の子に声をかけて草むらに連れ込んだり、車に引きずり込んでわいせつなことをしたりという手口が多かった。「知らないおじさん」による卑劣な犯行なので事件として認知しやすかった。 しかし、今の小児性愛者は、教師という立場を隠れ蓑にして、女子児童を盗撮する。そして、同じ小児性愛者のグループチャットで共有して「これはいいですな」なんてやっているので表面化しにくい。誰もいない教室に連れ込んでわいせつなことをする変態教師でも、子どもからすれば「よく知っている先生」なので被害を訴えづらい。つまり、手口がより巧妙で地下にもぐっているので、事件として認知されにくくなっているのだ。
これは半世紀にわたって10代前半の子どもを襲い続けたジャニー喜多川氏も同じだ。 子どもに対して指導的立場で、その世界で圧倒的に力のある大人から性加害を受けても、子どもはSOSの声を上げられず泣き寝入りするしかないという現実は、SMILE-UP.(ジャニー喜多川氏による性加害の補償業務を担う会社)に寄せられている1027名からの被害補償の申告がすべて物語っている。 さて、このような形で教育現場に「変態教師」がかなり紛れ込んでいる恐れがあるなかで、我々はどうやって子どもたちを守っていくべきか。 ● 世界で進む「小児性愛者」を摘発 捜査機関と“私人逮捕系”が混在 子どもに接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認することを義務とする日本版DBSに期待する声も多いが、小児性愛者だということを用心深く隠して、教員になったような人にはあまり効果がない。 そこで注目されているのが、校内や教室に防犯カメラを設置するという案だ。 これに関してはプライバシーを問題にする教員も少なくないが、そういう「プライバシー」を逆手にとって変態教師たちが、やりたい放題やっているという現実もある。 今や商店街や住宅街、商業施設の中などにも当たり前のように防犯カメラがあって、犯罪抑止と共に何か事件が起きたときには重要な証拠にもなっている。なぜ学校だけは監視カメラを設置してはいけないのか。 教室の映像を記録することをそこまで嫌がる教員というのは、よほど教室で人に見られたくないことをしているのか、とつい勘繰ってしまう。 だが、教室への監視カメラ導入が進まなくとも、遅かれ早かれ日本の「変態教師」はあぶり出されていくだろう。 実は今、世界的に「小児性愛者」を摘発・逮捕していくという機運が非常に強くなっている。 3月26日のニューヨーク・タイムズによれば、アメリカでは近年、「ペドファイルハンター(小児性愛者狩り)」と呼ばれる自警団的な活動がネット上で急増している。 これは未成年者になりすませて小児性愛者を誘きだし動画で晒すというものだが、最近は電気ショックを与える、タトゥーを入れさせるなどの暴力的制裁をするケースも増えている。同紙によれば、2023年以降にペドファイルハンターによる暴力事件が170件以上発生しているという。
この暴力を後押ししているのが「大衆の憎悪」だ。ペドファイルハンター動画のコメント欄は荒れに荒れて、「尿を飲ませろ」「殺せ」などと過激なコメントで溢れており、制裁が過激化しているのだ。 こういう「小児性愛者狩り」はチェコでも問題になった(AFPBB News 2024年8月10日)。「私人逮捕系YouTuber」が注目を集めた日本でも、「警察が頼りないので変態教師を捕まえてお仕置きをします」なんて人があらわれる可能性は十分にある。 そこに加えて、国際社会でも小児性愛者を追いつめる取り組みが進んでいる。 例えば今年4月、児童ポルノなどの映像9万本がアップロードされている世界最大級の小児性愛者コンテンツ共有サイト「Kidflix」(キッドフリックス)」が摘発、閉鎖された(欧州刑事警察機構発表資料)。 この捜査にはドイツをはじめ世界35カ国が協力して、世界中で1400人の容疑者が特定されたという。 国際的な小児性愛犯罪への追及は続いており、5月にはフランスでもオンライン小児性愛組織の摘発が行われ、55人が逮捕された(CNN 5月23日)。 このような世界的な流れはいずれ日本にもやってくる。つまり、「教室に監視カメラを持ち込むのはプライバシーの観点から慎重にすべき」なんて生ぬるい議論をしているうちに、ネットやSNSのサイバー捜査から「変態教師」の大規模摘発が行われていくのである。 日本は世界の小児性愛者から羨望の目で見られるほど、児童ポルノなどの規制がゆるい。「ジュニアアイドル」でググってみていただければわかるが、10歳などの少女が肌を露出した衣装に身を包んだ写真が溢れている。ちょっと前には、あるジュニアアイドルの「使用済みのステージ衣装」を、親がメルカリで販売していることが問題になった。 そのように「子どもを性の対象としてビジネスにするカルチャー」を日本では、「アイドル文化」や「推し活」という言葉で巧みに正当化してきた。 つまり、おじさんたちが露出の高い衣装に身を包んだ10代の少女を熱烈に応援したり、写真撮影したりしているのは、「純粋な気持ちで応援している」だけであって、「決して性的な目で見ているわけではない」というロジックだ。
これは前述した小児性愛者の教師もインタビュー中に何度も言っていた。自分は確かに小学生が好きだが、それはいやらしい目で見ているのではなく、純粋に「かわいい」と思っているだけでアイドルを応援しているのと変わらないというのだ。だから、少女が嫌がる行為や、わいせつな行為などをしないと断言していた。 ただ、インタビュー時はそう胸を張っていたこの人だが、数年後に懲戒免職された。女子児童の下着を盗んでいたことがバレたのだ。 子どもが好きなだけで凶悪な犯罪をしているわけではない。小児性愛者の中には、そんな苦しい言い訳をしながら結局、欲望を抑えられずに子どもを傷つけてしまう者が少なくない。 教育現場に潜む「変態教師」もそこは同じである。被害者を出してからでは遅い。教職者としての良心が残っているのならば一刻も早く職を辞して、専門機関などでカウンセリングを受けていただきたい。 (ノンフィクションライター 窪田順生)